HACCP(ハサップ)とは?義務化はいつから?簡単に解説

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「HACCP(ハサップ)」とは?HACCPとはなにかについて簡単に解説し、認証・資格の取り方と、今後飲食店が導入に必要な取り組みも説明していきます。そして、義務化・制度化はいつからはじまるのか?飲食店のためにわかりやすく解説します。

食品の衛生管理おいて重要な手法になってきているHACCPをご存知でしょうか?

一言で言うと、食材がどのように保存され、調理されて、お客様に提供されたのか記録を残し、透明化する手法です

本記事では、HACCPの意味や目的、義務化のタイミングなどについて詳しく解説していきます。

HACCPの義務化は2020年から?

従来は食品製造業者のための衛生管理方法でしたが、2020年をめどに飲食店への導入が義務化されようとしています。

記事では、HACCPの意味や目的をまず解説して、飲食店が今後どのように導入していくべきかを紹介していきます。(本記事は2018年7月時点の情報をもとに執筆しております)

HACCPとは? 読み方は?

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そもそもHACCPという言葉やその意味をご存知でしょうか?ハサップと読みます。 ここでは、意味や目的、起源、日本における取り組み、従来の衛生管理方法との違いなどを紹介していきます。

意味

HACCP(ハサップ)は、

  • 「Hazard(ハザード)」
  • 「Analysis(アナリシス)」
  • 「Critical(クリティカル)」
  • 「Control(コントロール)」
  • 「Point(ポイント)」

の頭文字をとったものです。

危害分析重要管理点」と訳され、食中毒菌や異物混入など食品の危害要因を科学的に分析し、これらの危害要因を除いたり、低減したりする工程を継続的に管理し、データとして記録しておく衛生管理方法です。

目的と起源

HACCPの目的は食品製造においては問題のある製品の出荷を未然に防ぐため、飲食店においては食中毒などを未然に防ぎ、安全な料理をお客様に提供するためです。

HACCPの起源は、1950年代末から70年代初期にかけて、アメリカのNASAで実施されていたアポロ計画の中で、宇宙食の安全性を確保するために考案された食品の安全管理方法でした。

ひとたび宇宙で食中毒などが発生したら、アポロ計画そのものが破綻したり、宇宙飛行士に生命の危機を及ぼしてしまいます。そのため、事前に食中毒の危害を防ごうとする食品の安全管理が検討されました。

日本での義務化・制度化はいつから?

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HACCPによる衛生管理システムは、アメリカのNASA(アメリカ航空宇宙局)から始まり、その後、アメリカ国内、EU、カナダ、アジア諸国など、世界的な広がりとともに、その導入の必要性も日々増しています。

義務化はいつから?日本におけるHACCPの歴史

日本では1998年に「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置(HACCP手法支援法)」が制定されました。 厚生労働省と農林水産省が共同で、HACCPの導入による食品製造過程の管理を、実施するために様々な取り組みが行われて来ています。

最近までは、「食品の製造過程」に対しての法律であったので、食品製造業の大手や輸出業業者が導入する制度と認識されていました。

しかし、2015年3月から発足した厚生労働省のHACCP普及う中央協議会において、HACCPは飲食店の導入義務化を目指した自治体の条約改正などが段階的に始められています。

2020年に向けて義務化?

このような流れの中、2020年の東京オリンピックまでに日本でのHACCP義務化という議論がされています。これは、2020年、東京オリンピックに際し、今の食品安全管理システムでは、オリンピック選手や海外からの来日客に対して、食事を提供できなくなる恐れが現実問題として取り上げられていることなどによります。

実際、厚生労働省では、まず、2018年度内を目処に、全食品事業者を対象にHACCPによる食品衛生管理を強化し、2020年には大手の食品製造業者などばかりでなく、飲食店、小売店、物流業者、その他、業界や事業規模に関わらず、HACCPの導入、義務化すると発表しています。

飲食業界では、まず、大規模飲食店から導入していくといわれていますが、世界的なHACCP移行の流れを受けて、小規模飲食店にも近いうちに義務化の波が押し寄せてくるかもしれません。その時に対処できるよう、今のうちに備えておく必要がありそうです。

飲食店がHACCP義務化・制度化に向け取り組むべきこと

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ここからは、いよいよ飲食店がどのように制度化・義務化に向けて取り組んでいくべきか解説していきます。

2018年〜2020年にかけてHACCP(ハサップ)導入の義務化が予定されていますが、それに先立ち、これから飲食店においてできることや、取り組むべきことについて見ていきましょう。

公益社団法人日本食品衛生協会による「HACCPの考え方に基づく衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」に飲食店が取り組むべき内容が明記されております。

  • 原材料の受入の確認
  • 冷蔵・冷凍庫の温度の確認
  • 交差汚染・二次汚染の防止
  • 器具などの洗浄・消毒・殺菌
  • トイレの洗浄・消毒
  • 従業員の健康管理・衛生的な作業着の着用など
  • 衛生的な手洗いの実施
  • 温度計の制度確認

という「菌をつけない・菌を増やさない・菌をやっつける」の食中毒予防3原則を基本に、飲食店が今まで行っていた衛生管理を、計画と記録により「見える化」することを徹底することが、HACCPに基づく衛生管理です。

以下公益社団法人日本食品衛生協会のHACCPの考え方に基づく衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)を要約転載しましたのでご確認ください。

原材料の受入の確認

  1. 原料が到着したら、商品、数量など、注文したものと納品されたものが合っているかどうかを確認する。

  2. さらに、外観、におい、包装の状態、表示(期限、保存方法)などを確認する。

  3. 可能であれば、冷蔵・冷凍品の温度を確認します。なお、冷蔵・冷凍品は、室温に おかれる時間をできるだけ短くする。

  4. なんらかの問題があったときは、決めた方法に従い、返品するなどする。

  5. これらを日誌に記録する。

冷蔵・冷凍庫の温度の確認

  1. 冷蔵庫、冷凍庫の庫内温度の温度計を確認する。 温度計がついていない場合には温度計を設置する。

  2. 決めた頻度(例:「始業前」)に従って、温度を測定する。 なお、保存している食材の期限表示も定期的に確認し、期限内に使用するようにする。

  3. これらを日誌に記録する。

交差汚染・二次汚染の防止

  1. 生肉、生魚介類などの食材はふた付きの容器などに入れ、冷蔵庫の最下段に保管する。冷蔵庫内の食品の種類ごとに決められた場所に保管する。

  2. 決めた頻度に従って、冷蔵庫内の保管状況や調理器具の使用・洗浄などについて確認する。

  3. これらを日誌に記録する。

器具等の洗浄・消毒・殺菌

  1. 器具類については、肉や魚などの用途別に分け、決めた頻度で、洗浄を行う。
  2. これらを日誌に記録する。

トイレの洗浄・消毒

  1. トイレの洗浄・消毒は以下の手順に従って、決めた頻度で実施し、確認する。
  2. これらを日誌に記録する。

従業員の健康管理・衛生的な作業着の着用など

  1. 従業員に下痢や嘔吐の症状がないか確認し、症状がある場合は治るまで出勤させない。
  2. 従業員の手指に傷がないか、確認する。ある場合には、耐水性絆創膏をつけた上から手袋を着用させる。手袋を着用する時も衛生的な手洗いを行う。
  3. 従業員が、食品を取り扱う際に清潔な服を着用しているか、髪が清潔か確認する。
  4. 腕時計や指輪などの貴金属は外しているか確認する。
  5. これらを日誌に記録する。

衛生的な手洗いの実施

  1. 決めた頻度(トイレの後、調理施設に入る前、盛り付けの前、作業内容変更時、生肉や生魚などを扱った後、金銭をさわった後、清掃を行った後)で、衛生的な手洗いを実施し、確認する。

  2. これらを日誌に記録する。

計画と記録により「見える化」をすすめる

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以上の全てに「日誌に記録する」とあるように、飲食店のHACCP対応のためには、計画と記録により「見える化」をすることが重要なのです。 どのように「見える化」をしていけばよいのでしょうか? 特に計画と記録の書式には規定はありませんが、2つの方法を紹介したいと思います。

 公益社団法人日本食品衛生協会が紹介する方法

計画

「なぜ管理が必要なのか」理解し、「いつ」、「どのように」管理し、「問題が合ったときはどうするか」の対応を考えて記入していくことを想定した書式です。 これらをPCのエクセルシートに記入あるいは、紙に記入し、スタッフ全員に衛生管理計画の内容を常に認識してもらうようにしましょう。

衛生管理計画書式例 null

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出典:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000179541.pdf

記録

管理計画に基づいて、行った確認内容を、毎日記録していきます。確認の都度記入が望ましいですが、1日の最後に日誌として残しておくことでも構いません。

一般的衛生管理の実施記録例

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出典:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000179541.pdf

記録を1年以上保管

これらの一連の記録は、1年以上保管しておく必要があります。 保健所の食品衛生監視員から提示を求められた場合に、速やかに対応できるようにしておきましょう。

HACCPヘルパーを活用して計画・記録をデジタル化

以上見てきました日本食品衛生協会推奨の方法は、紙媒体での記録ですので、保管にもスペースが必要ですし水濡れ等危険もあり、続けるためには負担になります。また、仮に問題が発生した時に、膨大な紙資料の中から原因を究明するのは難しいことです。

これらの作業をデジタル化することができるアプリとしておすすめなのが、「HACCPヘルパー」です。

HACCPヘルパーは、衛生管理に関する計画表の作成と、日々の記録ができるアプリです。計画表に合わせた記録表を作成でき、衛生管理に関する記録をアプリで入力できます。また、アプリから日々の記録内容を確認・承認することができ、入力漏れや異常を把握することができるのです。

厚生労働省と日本食品衛生協会から公開されている手引書と記録表に準拠して作られたアプリですので、適切な計画表と記録表を作成することが可能です。

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出典:https://www.haccp-helper.net/

食品衛生管理への意識変革が必要

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ここまでは飲食店がHACCP対応のためにやらなければならないことを解説しました。 最後にHACCPを導入する前提として行わなければいけない衛生に関する意識改革や、仕事のオペレーションの見直しについて説明いたします。

意識改革の必要性

普段のオペレーションを変えて、通常と異なることをお店全体で行うようになるには、スタッフに食品衛生管理の重要性を認識してもらうことが大事です。

オーナー自らがその重要性を認識するのは当然、板前やコックといったプロの人たちにも認識、または再認識してもらう必要があります。

長く飲食業界に従事してきたスタッフは、プロの人たちは、長年の経験や勘に頼ることが多く、食中毒などの危害原因についての知識が乏しい人が意外といるものです。 パートやアルバイトのスタッフに至っては、まったくの素人です。まず、徹底した衛生教育、再教育を行うことです。

例えば、「手を洗いましょう」というだけではなく、なぜ洗うのか、手にはブドウ球菌その他の菌が付着しているから手のひらだけでなく、爪の中、指の間、ひじまで丹念に洗うよう教え込むといったことが大切です。

こうした初歩的な衛生に関する認識を身につけてから、HACCP(ハサップ)手法を現場に取り入れていくと、導入がスムーズにいくのではないでしょうか。

調理工程の見直し

HACCP(ハサップ)は、食品の調理、製造工程の分析や記録を総合的に行う管理手法ですから、店の中でも同じように、料理ごとに調理工程を見直して、各調理段階でできる衛生面での工夫を行い、それを記録していくというプロセスから始めるとよいでしょう。

小規模飲食店における衛生面で気をつけるべきポイントとしては、仕入れ(検品)、仕入れたものの保管、調理、後片付けの4つです。以下詳しく見ていきましょう。

仕入れ時の衛生管理の徹底

仕入れに関しては、まず、仕入先の衛生管理はどうか、安心できる仕入先かどうか確認する必要があります。

街中には焼肉店の閉まったシャッターの前に、配送業者がビニール袋に入れただけの大量の肉が届けているようなお店も未だにあります。配送時間をずらして、シャッターが開いてから持っていくか、さらに、配送方法も発泡スチロール箱に詰め保冷剤を入れるとか、少し気を使えばできることをやらない業者も案外いるものです。

仕入先の選定には前もって調査しておくことも大切なことです。

良い仕入先と取引を始めたとして、次に大切なことは納入時の検品です。検品の際に確認すべきポイントとしては、外観、数量、賞味期限、温度です。

  1. 外観については、先の例のように、単なる袋詰めではなく、しっかりしたケースに入っているかなどのチェックをしましょう。

  2. 数量については、注文した数量になっているか。仮に数量通り納品しても、一部劣化して使えない部分もあったりします。

  3. 賞味期限については、消費期限も含めて期限内か、また、期限内であっても期限間近ではないかなど、細かいチェックも必要です。

  4. 温度については、冷凍品は冷凍状態で解凍されていないか、冷蔵品は冷蔵状態で納品されているか、要チェックです。

食品保管の仕方の見直し

食品保管については、安全性とともに作業の効率性も考えた方法が大切です。 安全性については、冷凍・冷蔵すべきで、常温放置してはいけないものを放置していないかチェックすることが重要です。

常温とは、通常はキッチン内の温度を指すと思ってください。ものによっては、冷凍・冷蔵以外の保管庫のようなもの室温のことです。

冷凍品としては、まぐろやイカその他の魚介類、冷蔵品としては、肉類、乳製品、野菜、常温保存は、パスタなどの乾物が代表的なものです。

注意すべき点は、冷凍してしまえば安心だと思っている人が多いようですが、冷凍品にも消費期限があることを忘れないでください。

調理の仕方の見直し

当たり前のことですが、調理に関してはお客様の立場・視点に立って行うことが何よりも大切です。 お客様に安全で美味し料理を楽しんでいただくためには、調理の全工程に細心の注意を払う必要があります。

肉、魚、野菜など、使用する原材料の品質、安全性を、目、鼻、口、手など五感でチェックするとともに丁寧な扱い方をすることも大切です。

刺身用の魚介類などは、調理するわずかな間に鮮度が低下し、また、包丁などの扱い方、解凍の仕方ひとつで衛生上の問題が発生しかねません。

後片付けにも衛生管理を徹底

調理後も、衛生管理上気の抜けない作業に、作り置き商品の扱い方と調理後の後片付け、残飯の処理などがあります。

作り置き商品も常温でその日のうちに使い切ってしまうのか、冷凍・冷蔵保存し、数日使うのか、製造年月日など、はっきりとしたデータとして記録することが大切です。

後片付け、調理器具の保管管理にも細心の注意を要します。生肉用と野菜用の包丁、まな板を混在させることのないように、ということは典型的な例です。

残飯処理についても、蓋付きの容器に保管し、害獣、害虫の発生を未然に防ぐなどの対策が必要とされます。

まとめ

いかがでしたか? ここまでHACCP(ハサップ)の世界的に重要視されているということに加え、小規模飲食店が今できることを解説してきました。

義務化が騒がれてからでは、余裕を持って考えることができないかもしれません。そこで、今からHACCP(ハサップ)導入のためにできることを、コツコツやっていきましょう。

別の側面として、作っている料理を見直したり、調理工程の見直しをすることは、理想の店作りをすることにも役立つと思いますので、自分の店をよくすることだと思って取り組んでみてはいかがでしょうか。

(参考)日本における代表的な認証機関・制度とHACCP資格者

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HACCPの代表的な認証機関と資格を持った人について説明します。 認証機関の代表的なものとして以下のものがあります。

HACCP認証機関・制度

北海道エリア 北海道
東北エリア 福島県を除く5県
関東エリア 神奈川県、千葉県を除く5県
東海エリア 愛知県、三重県、静岡県
北陸エリア 福井県、石川県
近畿エリア 全6県
中国・四国エリア 鳥取県、山口県、広島県、徳島県、愛媛県、高知県
九州・沖縄エリア 熊本県、長崎県

その他政令指定都市でも独自の認証制度を実施しているところがあります。

  • 業界団体によるHACCP認証制度 業界団体によるHACCP認証制度に関しては、各々の業界に限定されたもので、対象となる食品も限られたものになります。詳細は国のHACCP手法支援法による各業界の「指定認定機関」に確認するとよいでしょう。 主な指定認定機関と各々の認証制度としては、以下のものが代表的なものです。
公益社団法人日本炊飯協会 炊飯HACCP認定事業
一般社団法人日本精米工業会 精米HACCP
一般社団法人大日本水産会 水産加工施設HACCP認定制度
一般社団法人日本弁当サービス協会 優良弁当サービス事業所
公益財団法人日本食品油脂検査協会 「食品加工油脂のHACCPシステム認証工場」
一般社団法人日本惣菜協会 「惣菜製造管理認定事業」
一般社団法人日本冷凍食品協会 「冷凍食品認定制度」

HACCP資格者

HACCP認証を受けたとしても、実際にシステムとして機能するには、別にHACCP資格を持った人が、現場で指導することが必要です。こちらも代表的なものをいくつかあげておきます。

  • HACCP普及指導員 HACCP普及指導員は、公益社団法人日本食品衛生協会が行っているものです。もともとは「食品衛生管理制度」という資格でした。一定の研修の後、申請する必要があります。
  • HACCP管理者資格 HACCP管理者資格は、日本食品保蔵学会という学会によって行われているものです。この資格を取得するためには、大学などで一定の単位を取り、その後、学会主催の研修会に参加する必要があります。
  • HACCPリーダー(食品安全管理技術者) HACCPリーダーは、一般社団法人日本規格協会が行っているもので、この資格を取るには、一定の実務経験などが必要となります。