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日本政策金融公庫からの公的資金借り入れの事業計画書作成ガイド

日本政策金融公庫からの公的資金借り入れの事業計画書作成ガイド
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自己資金1/10でも、良い事業計画書なら日本政策金融公庫(日本公庫)の審査を突破し、公的資金の借り入れることはできます。本記事では公的資金融資機関の種類を解説し、借り入れのために必要な事業計画書の作成に必要な5つのポイントを解説します

この記事の目次

飲食店は色々な業界の中でも、特に事業者数の多い業界です。 飲食店にスタッフとして勤務中の方ばかりでなく、会社勤めをしている人の中にも、いつまでも人に使われたくない、小さな店でもいいから一国一城の主になりたいという方がいるのではないでしょうか。

確かに飲食店は昔から「ラーメン屋でもやるか」、「飲み屋でもやるか」といった軽い動機で開店できる業界ではありました。ただ、いざ開店準備を始めると、これが意外と大変なものです。

保健所への申請から営業許可を取るまで、ある程度の店舗になると所轄の消防署への届出、深夜にアルコール類を提供しようとすれば所轄の警察署へ、といった行政手続きだけでも大変な労力が必要です

また、出店場所や店舗物件を探すのも重要な作業です。優良物件は一般的には大手のチェーン店などに取られてしまい、よい店舗物件を探すには相当な時間と労力がかかります。物件が見つかったとしても、店舗のデザイン、設計、施工などの業者への依頼はどうするか、什器類は、食材関係は、と考えていくと気が遠くなります。

そして最も大きな問題が開業資金です。これをクリアしなければ、出店計画そのものが先に進みません。最悪は断念しなくてはならないこともあります。 今回は公的資金融資を活用した飲食店の開業方法について、必要な自己資金と出店計画の方法などに触れながら説明をしていきたいと思います

飲食店経営のための最低開業資金1,000万円はどのように集めるか

日本政策金融公庫
飲食店を開業するには、小規模の店舗でも一般的には1,000万円前後の開業資金が必要です。 ここでいう開業資金とは、開業そのものに要する資金と、開業後3〜6か月分の運転資金、及びオーナー自身の生活費を含んだものです。主な開業資金には次のようなものがあります。

  • 自己資金 自己資金の内容としては、毎月の給料の一部を貯めたもの、他人に貸していた金銭の回収によるもの、親などからの贈与によるもの、株式などの有価証券を売却したもの、生命保険の解約返戻金、そして退職金などがあります。

  • 親族や知人からの出資金 親、兄弟姉妹、親しい知人からであっても借り入れの場合は返済義務が生じ、融資審査上、不利になります。この場合、出資金扱いにすると、返済義務はなくなります。審査の際に出資金であることをしっかりと伝えるようにしましょう。

  • 銀行などの民間の金融機関 創業融資に関しては、経営実績がないことから、銀行などの金融機関は独自の(いわゆるプロパー)融資には慎重になります。金融機関独自の融資はあまり期待しないほうがよいでしょう。

  • 公的資金融資支援 国によるものや都道府県、地区町村などの自治体、その他の公的機関による融資や融資支援事業のことです。創業融資に際しては、銀行などからの借り入れがあまり期待できないので、こちらの公的資金融資が中心となります。

公的資金融資機関にはどのようなものがあるのか

日本政策金融公庫
 公的資金融資を行う機関には、公的機関による直接的な融資、保証などの形で民間の金融機関による融資を間接的に支援するもの、また国や自治体などの予算から直接交付を受ける返済の必要のないものもあります。 どのような公的資金融資機関があり、どのような融資や融資支援を行っているのか具体的に見ていきましょう。

最も利用されている「

100%政府による出資で設立された法人で、株式会社の形態を取っています。銀行などの金融機関から調達した資金を元にして、国民の様々な資金需要に低利子で応じてくれます。また、返済期間も長く設定されています。最も広く利用されている代表的な公的資金融資機関です。

飲食店オープン時、最も利用される融資制度としては「新創業融資制度」があります。 無担保、無保証、限度額3,000万円という内容です。自己資金が創業資金総額の1/10以上という要件も魅力です。

民間の金融機関からの融資が受けやすくなるように支援する「

信用保証協会法という法律により設立された公的な法人で、保証協会が銀行などの民間金融機関に対して保証することで、国民がこれらの金融機関からの融資を受けられやすくなるものです。一定の保証料(経営状況により保証額に対して0.45〜1.90%)の支払いが必要です。創業融資も保証協会の保証付きなら、銀行も応じてくれます。

日本政策金融公庫とともに飲食店オープンに際してよく利用される制度として「小口零細企業保証制度」があります。保証限度額2,000万円、保証人は法人以外原則不要、担保も原則不要、ただし、一定率の保証率がかかります。

都道府県・市区町村などによる制度融資

東京都などの自治体が、指定する銀行などの金融機関に、預託金という名目で資金をプールしておきます。これを元資にして、上記の保証協会の保証を付けた上で、低利子、低保証料で融資を行うものです。

商工会議所(商工会)

商工会議所などでも融資支援事業を行っています。経営指導を受けることで、商工会議所などの推薦に基づき、日本政策金融公庫から融資を受けられるものです。一般的にはマル経融資などと呼ばれています。創業資金よりは運転資金が必要な時に利用するものです。

補助金・助成金

国や自治体の予算や補正予算の中から、一定の要件を満たした申請者に交付されるもので、原則返済不要です。

代表的な公的資金融資であるの手続の流れ

日本政策金融公庫
公的資金融資機関であるの、融資相談から融資実行までの手続を、飲食店の開業計画の事例に沿って見ていきます。

事例 元大手電機メーカー社員が脱サラして公的資金融資を受けながらカフェをオープン

比較的手軽に開業できる飲食業態としては、カフェやラーメン店があります。ここでは大手電機メーカーで働いていた人が、脱サラして

の融資を受けながらカフェをオープンするという事例を元に手続きの流れを概説します。   大手電機メーカーに勤め数年、今後どうしようかと将来設計を思い描き始めました。心機一転、自分の店を持とうと考え、給料より月々一定額を積み立てて自己資金が貯まってきました。 そして、カフェ開業のために、店のコンセプトはどうするか? 出店場所は? 対象はどのような年齢層にするか? そして開業資金はいくらぐらい必要になるか? 足りない分はどのように調達すべきか? など、より具体的な内容について検討する段階に入ります。   創業に際して最大の課題は開業資金です。検討した結果、不足する額は最も利用されているからの借り入れでまかなうことにしました。

の相談から融資実行までのプロセス

の融資制度の中で、飲食業の創業を対象とするものは、「生活衛生貸付」や「企業活力強化資金」などがあります。手続きの流れはどちらも基本的に同じです。 の融資は相談から指定口座への振込まで、通常1か月程度要します。そのため、少なくとも2か月前から事業計画書などの作成に取り掛かっておかなくてはなりません。

  1. 相談

各支店(都道府県の主要都市を中心に全国に152店)の窓口での相談のほか、電子メールでの相談も可能です。相談内容は、どのような事業を計画しているのかという質問やそれに対する融資制度の案内といった一般的なものです。

  1. 申し込み

相談の際に申し込みも同時にできます。申し込みは自宅の最寄りの支店窓口となります。 借り入れ申込書のほかに創業計画書(公庫所定のもの)設設備の見積書店舗物件の概要がわかるもの(賃貸契約書までは必要ありません)が必要です。「生活衛生貸付」の場合、都道府県知事の推薦状なども必要になります。

ここで注意すべき点としては、創業計画書(公庫所定のもの)です。 最低限の必要事項が記載されているのですが、これだけでは開業計画の細部まではわかりません。そのため、別に独自の事業計画書を作る必要があります。この事業計画書の内容次第で融資の7〜8割が決まるといっても過言ではありません。 事業計画書については後の項目で詳しく説明します。

  1. 面談

創業計画書や事業計画書に基づき、担当者との面談を行います。自分の言葉で熱く、少し誇張するくらいに語ります。売上、利益などの数字の裏付けも自分の言葉で説明できることも重要です。 面談では当然、人物像を見られるわけですから、身だしなみや言葉遣いにも十分な注意が必要です。この段階では、賃貸契約書、その他の契約書、什器・備品の見積書などの追加書類を提出します。

また、担当者による店舗訪問もこの時点で行われます。そして様々な角度から判断され、融資の可否が決まります。最も精神的にきつい時期ですので、強い意志を持って乗り切りたいものです

  1. 融資決定

融資が決まると、借用証書などが送られてきますので、必要事項を記載し返送すると、指定金融機関の口座に振り込まれます。ホッとすると同時に、これからが本当の意味でのスタートです。

を利用した開業計画を進めるためには、開業予定日から逆算してどの時点でへの相談や、その他の手続を組み入れるかといった、しっかりとしたタイムスケジュールを作成しておく必要があります。

また、税金の支払いや公共料金の振込は、期日までに行っておきましょう。不要不急の消費者金融からの借り入れやカードローンなども、1年ほど前から控えたほうがよいでしょう。これらも審査の対象になります。

公的資金融資には、事業計画書の作成が必要

日本政策金融公庫
以上概説してきた通り、公的資金融資を申し込む時には、原則それぞれの金融機関が指定する事業計画書(創業計画書、開業計画書という機関もある)の作成が必要となります。

公的資金融資には、なぜ、事業計画書の作成が必要になるのか

融資担当者は、不特定多数の申込者と面談しなければなりません。話しただけではどのようなお店をどのくらいの資金で作り、どこで、誰に、どんな商品を提供するなど詳細に理解できませんし、次の面談までには忘れてしまっているでしょう。 そこで必要事項を要領よく書いた指定の事業計画書を作成しておけば、交渉が早くスムーズに進められます。

事業計画書は誰が作成するのか

事業計画書は自分自身で作成することが大原則です。 自身が作成した計画書であれば、面談の際に自分の言葉で細かい部分まで説明できます。担当者はプロですから、申込者自身が作成したものかどうか、すぐにわかります。この点が融資判断の大きなポイントでもあります。 仮に経営コンサルタントなどのプロに作成依頼した場合でも、事前に想定問答などを行い、内容を十分に理解して面談に臨むことが大切です。

公的資金融資別の事業計画書の作成方法

ここからは日本政策金融公庫、信用保証協会それぞれの事業計画書作成方法について説明します。 対象は異なりますが、基本どちらも必要な書式・内容には大きな違いはありません。

  • 日本政策金融公庫
    新創業融資制度 創業計画書
     
    日本政策金融公庫
    出典:日本政策金融公庫HP

飲食店開業に最も利用される融資制度である「新創業融資制度」の創業計画書の内容を見てみましょう。 A4サイズの簡単な書式で、具体的な内容は下記の通りです。

  1. 創業の動機
  2. 経営者の略歴等
  3. 取扱商品・サービス
  4. 取引先・取引関係等
  5. 従業員
  6. 借り入れ状況
  7. 必要な資金と調達方法
  8. 事業の見通し(月平均売上)

これらの項目について、数行記入するだけのものです。しかし融資担当は、これらの記載から申込者の人物像や事業の内容など、相当な部分を読み取ります。 このほかに飲食店関連の融資制度に「経営力強化資金制度」がありますが、事業計画書の内容は「新創業融資制度」の創業計画書と大きく変わりません。

  • 信用保証協会 信用保証協会にも創業計画書がありますが、こちらも基本的には、上記の「新創業融資制度」の創業計画書と内容の面では大きな違いはありません。

公的資金融資には所定の計画書だけでは内容が不十分

日本政策金融公庫のそれぞれの融資制度用事業計画書・創業計画書や保証協会の創業計画書はよくできていますが、やはり情報量が少なすぎます。事業コンセプト、戦略、計画、収支予定など、具体性や数字を持って新しい飲食店の経営方針や内容をわかりやすく伝えられるようにしなければけません。

公的資金融資を獲得できるオリジナル事業計画書作成のための5つのポイント

日本政策金融公庫
公的資金融資を確実に実行させるためには、それぞれの公的資金融資機関所定の事業計画書・創業計画書だけでは不十分です。 融資担当者にとっては、これでは数百万円から数千万円単位の融資を行うにはリスクが大きくなります。そこで必要になってくるのが、具体的で詳細な内容にまで踏み込んだオリジナルの事業計画書です。

オリジナル事業計画書作成のポイント 1. 事業コンセプトを明記する

事業コンセプトとは、簡単に言えば経営理念、経営に対する自身の考え方です。それは、今までの社会人あるいは経営者としてやってきた中で培われてきた基本的な考えです。 一見すると抽象的なもののようですが、公的資金融資機関所定の計画書にも必ずある項目です。創業の目的、動機、展望などの名称になっていますが、本質的には同じものです。

たとえば、「当店独自のタレを使ったラーメンをエリアのお客様に提供し、他店では味わえないラーメンを楽しんでいただきたい」、「将来的にはほかのエリアへ複数店舗を出店し、雇用を創出して地域経済に貢献したい」といったものです。 融資担当者はこうした面から、その申込者の経営に対する深い知識や事業に対する姿勢、本気度などを判断しています。

オリジナル事業計画書作成のポイント 2. コンセプトに見合う戦略を明記する

戦略とは、事業コンセプトを達成するために必要な事項をまとめたものです。 ラーメン店の例でいえば、具体的な出店場所を探し、現地調査(駅から店舗物件までの動線や通行量など)や競合店の調査などを行いデータ化しておくことが必要です。 そして、自分の店の商品についての明確な説明、それが他店と比べどのように差別化できるか、どのような販売促進方法が効果的(チラシ配り、web広告、ポスティングなど)でコストはどれくらいかかるか、仕入れルートはどう確保するかなどはっきりと認識しておきましょう。 これらもすべて公的資金融資機関の事業計画書の記載事項になっています。

オリジナル事業計画書作成のポイント 3. 具体的な計画を明記する

計画とは、オープンから収益化・融資返済までの具体的なタイムラインです。スケジュールを分割して、いつまでに、誰が、何を、どうするかがはっきり分かるように、事業コンセプトや戦略に比べて具体的な内容で明記しなければいけません。 物件探し、賃貸契約の締結、工事業者との交渉、仕入れなどの取引先の決定、保健所などへの届出、従業員の手配、そしてオープン後何ヶ月で黒字化を目指し毎月いくらずつ返済するなど、融資返済までに必要なプロセスをタイムラインに落とし込むことで事業計画書をつくりあげます。 通常遅くともオープンの2か月前までには公的資金融資機関に相談しますので、計画的に準備してください。

オリジナル事業計画書作成のポイント 4. 予測損益計算書等の作成

オリジナル計画書の中で最も肝になる事項です。経営者の数値に関する知識が評価されるからです。具体的に作成する計画書は「開業資金計画表」、「予測損益計画書」、「資金収支表」などです。これら計算書の出来で、融資が可能かどうかが決まってしまいます。

  • 「開業資金計画表」とは、開業にあたって必要になる設備資金や運転資金などの見積計算表です。物件契約書、什器備品の相見積書、パンフレットの金額などから、具体的に算出します。

  • 「予測損益計算書」とは、売上、原価、経費、営業利益などを予想して制作する計画書です。客単価、来客数、天気、曜日、季節など、さまざまな要因を考えて算出するもので、最も経営手腕が問われるところです。

  • 「資金収支表」とは、この現金の流れの予測をするものが「資金収支表」です。一般的に掛売・掛仕入れが多い場合、利益の額と手元の現金の額は一致しないものです。現金の流れを予測することで、運転資金がショートしないようチェックするために必要な表です。

オリジナル事業計画書作成のポイント 5. 審査基準のツボを押さえる

一般的に融資審査担当者は、「自己資金の割合」、「資金使途の明確性」、「返済可能性」、「経験、能力」に注目をしています。これらを強調した内容の事業計画書を作成しましょう。

そのほか融資担当者に応じて好みがありますので、審査に向けたやり取りの中で、融資審査担当者が何を審査の基準にしているのかを押さえ、その基準を強調したオリジナル事業計画書を作成していきましょう。

まとめ

日本政策金融公庫
このように、国や都道府県・市町村など地方自治体からの公的資金融資を活用することで、早期に店を成長軌道に乗せることも期待できます。そればかりでなく、売り上げが立ち金融機関からの信用が上がれば追加融資を受けることができ、さらなる事業展開も可能になるでしょう。

はじめての公的資金融資の申請は慣れていないこともあり大変かと思います。しかし、

  • コンセプトを明記する
  • 戦略を明記する
  • オープンから収益化・返済に向けた計画を明記する
  • 予測損益計算書の作成
  • 融資審査担当者の審査基準のツボを抑える

以上のポイントを押さえたオリジナルの事業計画書を作成すると、融資獲得のためにより大きな効果が期待できます。 効果的なオリジナルの事業計画書を作成すれば、公的資金融資の満額を勝ち取ることもできます。そして安定した経営ができ、さらなる事業展開も可能になるでしょう。

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