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飲食店におけるクレームとその対処方法

どんな優良店でもクレームは起こり得ます。 いざ、クレームが起きて、自身で対処しなくてはならなくなった時、どうすれば良いのでしょうか。

飲食店を経営するにあたって一番避けて通りたい事柄のひとつが「クレーム」ではないでしょうか? しかし、クレームを恐れていては、まともな営業が成り立ちません。クレームは些細な不満がいくつか重なった時に起こります。その些細な不満のうちにフォローできていれば、大抵のクレームは起こらないのです。 お客様の話をしっかり聞いて、ひとつひとつの些細な不満をどの時点でフォローしておくべきだったのかをお客様と話し合うことでクレームは円満に解決します。クレームを恐れているあなたのために、クレームのパターンとその対処法について、様々な飲食形態で店長からオーナーまで約24年の経験を持つ私の体験から説明しましょう。

お客様から寄せられたクレームについて「体験談」

提供した食事の中に髪の毛が混入していた

このパターンはどの店でもあり得る上に、飲食店では避けては通れないトラブルです。 速やかに謝罪して、替えの商品を提供するか、代金の返金をしましょう。また、どの程度食べて髪の毛が出てきたかも重要です。

ほぼ完食していて、代金返金を要求する場合は「言い掛かり」の可能性もあります。たとえ、言い掛かりだったとしても、1食分の返金で事を荒げずに帰ってくれるのなら、安いものです。次回の対応のために、しっかり顔だけは覚えておきましょう。

ほとんど食べていない状態であれば、オーダー順を割り込んででも、替えの商品を提供しましょう。気分を害して帰ってしまう場合には、代金を取らないことはもちろんですが、割引券などを添えて丁重にお見送りします。

サラダの中に虫がいた

どんなに丁寧に洗っても野菜には虫がついているものです。お客様に提供されたサラダの中でアオムシは元気に蠢いていました。女性のお客様だったので、虫はショックだったようで、お詫びしても何を言っても怒って口を聞いてくれません。とにかく、このお客様から代金だけはいただけないということで、お帰りの際にお連れの方にこの方のランチ代金をお渡しました。近くのオフィスで働くOLさんだったので数日後、何事もなかったかのように来店して、サラダまで残さず食べて帰ってくれました。

宴会終了時、隣の部屋のお客様の履物と履き違えた

その日は何事もなく閉店作業をして、店を閉めて帰った次の日に、クレームの電話が鳴りました。 「昨日の宴会で俺の靴を誰かが履いて帰った」というので、同席していた人の中に履き違えた人がいないか聞くとそれは無いとのことでした。お客様はどうやって昨日帰ったのかを聞くと、昨日は酔っていて記憶が無いとのこと。 どんな靴なのかを聞くと黒いリーガルの革靴でほとんど新品の物らしい。昨日の宴会の幹事さん全員に連絡して靴を取り違えたメンバーがいないか当たってみましたが、履き違いは無し。

クレームのお客様に連絡をする度に怒りが増していて、「今すぐ詫びに来い!」と言い出す始末。 とりあえず、1,000円程度の菓子折りを持ってお客様の家を訪ねて、菓子折りと間違いの靴を引き換えました。 それから、2日後に60代くらいの男性が「靴を履き間違えて帰ってしまったようだ」と丁寧に箱に靴を入れて来店されました。

私の手元にあるクレームのお客様から回収した靴がこの老紳士の靴で間違いありませんでした。 ひとつ気になるのは、箱の中の靴はリーガルでもなければ、新品とは言い難い靴でしたが、一応見てもらおうと次の日、クレームのお客様にアポを取って靴を持参したところ、「ああ、これ。ありがと」で目も合わせずに玄関の扉を閉めてしまいました。

料理提供の遅れいつまで待っても、焼き鳥が出てこない

フランチャイズチェーン店だったので、支店の会議で「焼き鳥食べ飲み放題2,980円」という目玉企画が打ち出されました。私が店長をしていた店は支店の中で一番客席(80席)が多く、売り上げ(月900万)も高い店舗でしたので、当然、オペレーションに無理が掛かることと、売り上げが下がるということを抗議しましたが、支部の会議で決定したことだからと抗議は通りませんでした。できる範囲で試行錯誤しながら、毎日営業していましたが、ついにクレームが出ました。

「焼き鳥を食べにきたのに焼き鳥が40分も出てこない!」とにかく平謝りでしたが、お客様は怒って帰っていきました。このお客様は本社に苦情を入れたようで、次の日、支店に呼び出されました。 本社からのメールの内容は、「焼き鳥を食べに来たのに最初の2本の焼き鳥が出るまで、40分も待たされた。店長以下、学生アルバイトも必死にやっているのに、どの席の食事も遅れがちだ。本部として何かやるべきことがあるのではないか?」という内容でした。

このクレームのおかげで、キャパオーバーのメニューは見直され、焼き鳥食べ飲み放題は売り上げが伸び悩む店舗の切り札として使うという方針に変わりました。ちなみに焼き鳥食べ飲み放題を行っていた1ヶ月間は売り上げが820万といつもより悪く、原価率も跳ね上がっていました。

100名規模の大宴会で乾杯までに生ビールが揃わず

和食店の店長をしている時に、100名規模の大宴会での時でした。 通常だと生ビールの飲み放題コースでも最初の乾杯だけは瓶ビールでやってもらうということを予約の際に説明するのですが、この幹事様は「そこをなんとか最初から生ビールで頼む!」と押してきます。私は、生ビールだと全部出揃うまでに時間がかかって、最初に提供したビールは乾杯の時には泡が消えて美味しくなくなっているという説明をしたにも関わらず、「それでもいい!」というので仕方なく了解しました。

酒屋から、電源不要のビールサーバーを2台借りて、万全の体制で臨みましたが、それでも予想通り宴会前の挨拶や話が終わるまでに間に合いません。なんとか泡の消えたビールで乾杯したものの、すごくタイミング悪い感じで始まった宴会でした。お替りのビールは大きなピッチャーで出すので、その後の進行は問題なかったのですが、幹事様はずいぶん怒っていて、「店長のせいで恥かいた」といわれる始末。

予約の時に無理がある旨は説明したはずで、こちらも酒屋からサーバーを手配したり努力した事を伝えると「そこをなんとかするのがプロだろ!」とさらにお怒りでした。

店長の態度が気に入らない

この時は、焼き鳥屋の店長で焼き鳥食べ飲み放題の真最中の時でした。前述のとおりキャパオーバーの仕事のせいで、余裕が無いときにこのクレームは起こりました。提供遅れを取り戻そうと、アルバイトスタッフと二人で必死に焼き鳥を焼きながら、他のメニューで繋ぐために揚げ物やサラダを作っているスタッフに指示を出していました。 オープンキッチンのため、余裕のないおじさん(私)が学生バイトに大きな声の早口で指示を出すと怒っているように見えてしまったようです。 帰り際に「バイトを怒鳴りちらして、こんな感じの悪い店は初めてだ!」とお叱りを受けました。 自分に怒ったつもりはなくても、お客様にそう見えてしまったらアウトです。

クレームへの対応方法

以上が私が体験した、クレームの事例です。これらクレームを受けた際の対処方法について説明をさせていただきたいと思います。

クレーム対応に備えておくべきアイテム

クレーム対応では、その時だけで終わらず、何日もかかる場合もあります。 相手は自分にとって都合のいい事柄しか覚えていません。 そういったやりとりの中で、「言った、言ってない」「やった、やってない」というやりとりが必ず訪れます。 そういう場合に備えて下記の準備はしておきましょう。

  • 監視カメラ クレーム対策だけでなく、防犯にも役立ちます。 小さな店でも、出入り口から店内に向けて1台とレジ前が見える位置に1台は最低でも設置しておきたいところです。 出入り口では、相手の顔を映すことができます。 そして、クレームは案外レジ前で起こることが多いのです。

  • ボイスレコーダー 言い掛かりのようなクレームが起きたら即、ボイスレコーダーを回しましょう。 「念のために録音させて頂きます」というだけでクレーマーを撃退できる場合もあります。こっそりと録音するなら、ボールペン型のボイスレコーダーなどもありますので、胸ポケットなどに一本差しておけば安心です。

クレーム対応の心得

クレームに対処するには、必ずやるべき事があります。

  • 相手の名前を聞く
  • 相手の連絡先を聞く
  • (必要に応じて)相手の住所を聞く

最低限、名前と連絡先だけは押えておかないと、クレームに対する話し合いが物別れに終わって、話し合いの決着が付かないままにSNSなどで風評被害を被るということもあり得ます。最悪の場合、弁護士を介して解決しなければならない場合など、連絡先が分らないではどうにもなりません。

最初の第一声が大切

スタッフなどから事前にクレームが来たと聞いている場合、まずは申し訳なさそうな顔で「申し訳ございません」から話を始めましょう。 しかし、これはいきなり落ち度を認めたという意味ではなく、「お待たせして申し訳ありません」なのかもしれないし、「ご足労いただいて申し訳ありません」なのかもしれません。 とにかく、この一言で相手は自分が怒っている理由を早く話したくなりますが、間髪入れずに自己紹介を行い名刺を渡したりして相手のタイミングをずらすのです。 すると「今回の件について詳しくお聞かせ下さい」などとこちらが話しのイニシアチブを取りやすくなります。

クレーム対応の基本フォーマット

全て下記の通りに進むとは限りませんがやるべき事を順序立てていますので、番号に沿って話を進め、必要なら戻って繰り返し、解決まで漕ぎつけてください。 そして、絶対にやってはいけないことは、商品代金の返金以外で、「現金を渡すこと」です。

  • まずは「申し訳ございません」。
  • 自己紹介と同時に相手の名前と連絡先を聞く。
  • お客様の不満を聞く(絶対に途中で話の腰を折らないこと)
  • 腹痛など体の異常を訴える場合は、病院を案内し、診断書の提出をお願いする。
  • お客様から聞いた不満をまとめ、要約して確認を取る。
  • 異物などあれば、見せてもらい了解を得て、回収する。
  • 返金、値引き、謝罪など解決案を提示する。
  • 解決。

クレーム対応の基本方針“3匹のカエル”とは?

大きなクレームに対応する際のテクニックのようなもので3匹のカエルというものがあります。 店の規模や従業員数によってできる場合と出来ない場合があると思いますが、ひとつのテクニックとして記載しておきます。 これに沿ってクレーム対応を行うと不思議と相手の怒りや勢いは弱まり、スムーズに解決します。

  • 人をカエル(替える) バイトスタッフより、社員、社員より店長。女性より男性。若手よりベテラン。このように対応する人を替えることで相手に特別な対応をしているという感覚を与えられます。

  • 時間をカエル(変える) 激しく憤っているお客様に有効で、折り返しの電話や訪問を約束をすることで、小休止を入れます。 怒りをクールダウンするきっかけになり、落ち着いて仕切り直しができます。

  • 場所をカエル(変える) レジ前での立ち対応から、個室や事務所など、落ち着いて話ができる場所に変わることで、お客様の感情が収束するきっかけにもなりますし、特別感も湧きます。

暴力団員や準構成員への対処

一般人なら暴力団員に凄まれると誰しも怖いものです。 もし、暴力団とのトラブルが起こった際は下記の対応を心がけてください。

基本的な姿勢 1. 毅然として態度で対応する。 2. 脅しや暴力には屈しないしいう信念 3. 冷静な対応

暴力団は脅しや挑発のプロです。 強がる必要はありませんが、毅然とした態度で冷静に話しをしましょう。 それを心がけるだけで、失言や言葉の揚げ足を取られることを防げます。

対応の要領

  • 相手よりも多い人数で対応する。
  • 録音、録画が可能な場所で対応する。
  • 相手の組事務所には行かない。
  • 名刺をもらい、自動車のナンバーを確認しておく。
  • 金銭の要求(誠意をみせろ 等)があれば、具体的な金額を聞き出す。
  • 念書、詫び状は書かない。
  • 言動には注意を払う。
  • 社長などトップには対応させない。
  • 相手が帰ったらすぐに警察に相談する。

上記の全ての要領はそう簡単に揃えられません。 このうちの3つくらいは実践できると相手の受け取り方が変わります。 暴力団にとって一番の"カモ"は暴力団対策をしておらず、慌て慄くばかりで的確な対応ができない人なのです。

まとめ

どんな優良店でもクレームは起こり得ます。 いざ、クレームが起きて、自身で対処しなくてはならなくなった時、この記事を読んでいたかどうかで、心のゆとりが違ってきます。 そして、お客様の納得のいく対処ができたなら、そのお客様は貴方の店のファンになるはずです。

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